目の病気について

  1. 石川眼科医院 ホーム
  2. 目の病気について
  3. 症例(15) 加齢黄斑変性治療 最新の話題2010

このページでは様々な目の病気についての簡単な説明をします。

症例(15) 加齢黄斑変性治療 最新の話題2010

第10回 International AMD and Retina Congress

昨年、2010年10月29日、30日にスイスのルガーノにて開催された第10回 International AMD and Retina Congress(国際加齢黄斑変性・網膜学会)に参加してまいりました。この学会では約40ヵ国から、約500人が参加し、日本からは私(副院長)を含め9名の医師が参加しました。学会では加齢黄斑変性のみならず、網膜疾患に関する現在の状況に関する演題、討論がありました。ここでは、少し難しい内容になると思いますが、この学会で討論されたことと、私の今の治療に関する考え方を書きたいと思います。

加齢黄斑変性に対する抗VEGF療法の維持療法について

現在、世界的にも加齢黄斑変性治療の主流は、加齢黄斑変性の発生、進行を促す物質である、血管内皮増殖因子(VEGF)の働きを抑える薬物を眼球内へ注射し、加齢黄斑変性からおこる脈絡膜新生血管の活動性を低下させ、退縮させる抗VEGF療法となっています。この治療方法は、これまでの加齢黄斑変性治療と比較すると、より高い治療効果を示すことは事実で、視力が改善する患者さんも多くみられます。しかし、しばしば病気が再発し、そのたびに眼球内への高価な薬物の注射が必要となり、患者さんの経済的な負担の増加、医療機関の許容範囲を超えるほどの注射件数増加が問題となっています。この学会でもいかに注射回数を減らすかと言うことが大きな話題となっており、様々な薬物投与スケジュールが示され比較されておりました。しかし、単独の抗VEGF療法では未だ注射回数を減らす決定的な方法は見いだされず、現在のところはひたすら抗VEGF療法を継続する方法が最良であるという結論でした。

光線力学的療法との併用療法について

抗VEGF療法の回数を減らす方法として、単独の抗VEGF療法では有用な方法は見いだされませんでしたが、光線力学的療法(レーザー治療)と抗VEGF療法の併用は有用です。また、併用療法のもう一つの長所としては日本人によくあった治療であるということです。日本人をはじめとしたアジアでの加齢黄斑変性の特徴として、加齢黄斑変性の特殊型に位置づけられている血管のこぶができるタイプである、ポリープ状脈絡膜血管症が多いと言うことがあります(加齢黄斑変性の40~50%が特殊型のポリープ状脈絡膜血管症)。このポリープ状脈絡膜血管症に対しては抗VEGF療法が効きにくいことが多く、光線力学的療法が有効です。この光線力学的療法に抗VEGF療法を併用することにより、光線力学的療法の欠点を抑えることができるのと同時に、治療効果がさらに高まります。日本人に対する加齢黄斑変性治療は、むやみに治療を長引かせないで、黄斑部網膜の障害が軽いうちに病気を落ち着かせることができる光線力学的療法と抗VEGF療法の併用療法が有用であると考えられます。

今後の新しい治療方法について

新しい種類の抗VEGF薬、ステロイド薬、その他の抗炎症薬、遺伝子治療などの研究が進んでいます。新しい抗VEGF療法の一つとして点眼薬の開発も進んでおり、今後の研究成果に期待したいところです。

  • 図1 学会のエントランス風景

  • 図2 会場風景

  • 図3 学会の開催都市となったルガーノの地名ともなるルガーノ湖をバックに記念撮影

このページのトップへ