このページでは様々な目の病気についての簡単な説明をします。
症例(14) 中心性漿液性脈絡網膜症(中心性網膜炎)
中心性漿液性脈絡網膜症(ちゅうしんせいしょうえきせいみゃくらくもうまくしょう)とは?
網膜の中心にある黄斑(図1、2)に部分的な網膜剥離(水ぶくれ)が起こり、眼の機能が低下する病気です。網膜色素上皮や脈絡膜の異常が原因と考えられています。
網膜色素上皮・脈絡膜とは?
網膜よりも外側で眼球を覆っている膜を脈絡膜といいます。脈絡膜は、血管が大変多い組織です。網膜は、網膜の血管のほかに、脈絡膜の血管からも酸素や栄養分の供給を受け、同時に不要になった老廃物を脈絡膜血管へ戻して、その機能を維持しています。
網膜は何層かの薄い層で構成されていますが、脈絡膜に近い一番外側の層を網膜色素上皮層といいます。網膜色素上皮は網膜と脈絡膜の間の関所にあたり、網膜に酸素や栄養分以外の物質が入り込むのを防ぐ働きをしています。これを、バリア機能といいます。
中心性漿液性脈絡網膜症はなんでおこるの?
中心性漿液性脈絡網膜症である人の眼では、脈絡膜血管の循環障害(血流が悪くなること)が起こっています。その結果、網膜色素上皮の一部でバリア機能が破綻し、その部位で網膜側に不要な物質(漿液)が流れ込み、それが網膜色素上皮層とその上の網膜の間に溜まって水ぶくれを作ります。水ぶくれの部分は、網膜剥離の状態となり、脈絡膜からの栄養補給が減少して網膜の働きが低下します。
症状は?
視力低下、物がゆがんで見える、物が小さく見える、色が左右で違って見えるなどの症状が現れます。
治療は?
- フルオレセイン蛍光眼底造影検査で蛍光物質の漏れがみられた箇所にレーザー照射を行い、網膜の蛋白を凝固(やけど)させます。すると凝固部分を修復しようとする活動が盛んになり、壊れた網膜色素上皮のバリア機能が修復され、脈絡膜から網膜へ液が流れ込まなくなります。その後、水ぶくれは自然に吸収され、網膜剥離が治ります。
- 蛍光物質の漏出点がものを見る中心にとても近く、通常のレーザー治療が困難な場合は、薬剤の反応を利用した、ものを見る中心にも照射できる光線力学的療法という治療が有効であると考えられています。
図1 眼球の断面図
図2 黄斑の断面図